ホテル双葉
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いにしえより、ここ湯沢には「山の神」が住んでおりました。山の神には「やまん坊」という、やんちゃなひとり息子がおり山奥の温泉に入ることがふたりのよろこびでした。ところがある日、少し大きくなったやまん坊が自分のお風呂が欲しい、と山の神にねだりました。「どこに作るのかい?」「あの湯宿の裏山がいいな!」なぜ、人里近い場所を選ぶのか、不思議に思いながらかわいいひとり息子のために、山の神は高台にある湯宿、「双葉」の裏山に温泉を湧かし、見事なお風呂を作ってあげました。それが、「やまん坊の山の湯」です。さて、双葉には「フタバちゃん」という湯宿の看板娘がおりました。空に浮かぶ雲のように、おおらかでみんなにやさしい性格の女の子でした。    

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